ホテルを開業するにはいくら必要ですか?

ホテルを開業するにはいくら必要ですか?

ホテル開業を検討する際、多くの日本人オーナーや事業者が最初に抱く疑問が「結局、いくら必要なのか」という点です。
インターネット上にはさまざまな金額の目安が掲載されていますが、実際の開業費用は立地、規模、建物の状態、運営方法によって大きく異なります。

このページでは、日本でホテルを開業する際に発生する費用を、現実的かつ実務に即した形で整理します。
これから事業計画を立てる方が「何に、どれくらいお金がかかるのか」を具体的に把握できる内容を目指しています。

ホテルの種類によって初期費用は大きく変わる

「ホテル」と一口に言っても、日本では複数の業態があります。
まずはどのタイプの宿泊施設を開業するのかを明確にする必要があります。

ビジネスホテル・シティホテル

都市部や駅周辺に多く、一定の需要が見込めます。
一方で、土地取得費や建築費が高くなりやすく、初期投資額は大きくなる傾向があります。
客室数が多い分、設備・人件費・システム導入費も増加します。

小規模ホテル・ブティックホテル

10〜30室程度のホテルは、比較的参入しやすい規模です。
建物を購入して改装するケースや、既存ビルをコンバージョンするケースが多く見られます。
デザインやコンセプトにこだわる場合、内装費が予算を押し上げる要因になります。

旅館・古民家宿

地方での開業が多く、物件取得費は抑えられる場合があります。
ただし、老朽化した建物の耐震補強や消防対応に予想以上の費用がかかることがあります。
和室特有の設備やしつらえもコストに影響します。

民泊・簡易宿所

初期費用は比較的低く抑えやすいですが、営業日数制限や地域ルールが収益性に影響します。
将来的にホテルへ転換したい場合、再工事が必要になるケースもあります。

物件取得にかかる費用の考え方

購入する場合

土地や建物を購入する場合、エリアによる価格差は非常に大きくなります。
都市部では、物件価格が総投資額の大半を占めることも珍しくありません。

購入時に考慮すべき費用には以下が含まれます。

  • 物件購入費
  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 不動産取得税
  • 既存設備の撤去費用

物件価格が安く見えても、改修前提であれば総額は大きく変わる点に注意が必要です。

賃貸する場合

初期投資を抑えるため、賃貸物件で開業するケースも多くあります。
その場合、以下の費用が発生します。

  • 敷金(6〜12か月分が一般的)
  • 礼金(エリア・物件による)
  • 保証会社利用料
  • 原状回復義務に関する費用

「家賃が安い=開業費用が安い」とは限らない点を理解しておく必要があります。

建築・改装工事にかかる費用

ホテル開業において、多くの事業者が想定以上の出費に直面するのが工事費用です。

法規制への対応

日本では、ホテル営業には厳格な基準があります。

  • 消防法への適合(スプリンクラー、非常照明など)
  • 建築基準法
  • バリアフリー対応
  • 保健所の基準

これらへの対応は必須であり、削減できる部分ではありません。

改装費の目安

小規模ホテルでも、1室あたり数百万円の改装費がかかることがあります。
共用部やバックヤード、設備工事を含めると、総額はさらに増えます。

見積もり段階で「将来の修繕」「運営しやすさ」まで考慮した設計を行うことが重要です。

家具・備品・設備費用

開業時には、宿泊に直接関わる備品も一式そろえる必要があります。

  • ベッド・マットレス
  • 寝具類
  • バス・トイレ設備
  • 家電(テレビ、冷蔵庫など)
  • フロント設備
  • 清掃用備品

安価な備品を選ぶと、数年後の交換コストが増える場合があります。
初期費用と耐久性のバランスを考えた選定が求められます。

各種申請・許認可に関わる費用

ホテル開業には複数の行政手続きが必要です。

  • 旅館業許可申請
  • 消防署への届出
  • 保健所検査
  • 建築確認関連手続き

申請自体の費用は高額ではありませんが、基準を満たすための工事費が実質的な負担となります。
行政との事前相談を行うことで、無駄な手戻りを防ぐことができます。

開業前後の運転資金

意外と見落とされがちなのが、開業後すぐに利益が出ない期間の資金です。

  • 人件費
  • 水道光熱費
  • 清掃費
  • 消耗品費
  • 広告宣伝費

少なくとも3〜6か月分の運転資金を確保しておくことで、安定したスタートが可能になります。

システム導入費用と業務効率

現在のホテル運営では、PMS(ホテル管理システム)の導入はほぼ必須です。

  • 予約管理
  • 客室管理
  • 売上・稼働率の把握
  • OTAとの連携

システムを導入しない場合、人的ミスや業務負担が増え、結果的にコストが膨らみます。

初期費用が低く、将来的に拡張できるPMSを選ぶことで、開業後の運営が大きく変わります。

想定される開業資金の一例

あくまで一例ですが、10〜20室規模の小規模ホテルの場合、以下のようなレンジになります。

  • 物件取得・賃貸関連費:数千万円
  • 改装・工事費:2,000万〜5,000万円
  • 家具・設備費:500万〜1,500万円
  • 各種申請・準備費:数十万〜数百万円
  • 運転資金:300万〜1,000万円

合計すると、数千万円〜1億円前後になるケースが多く見られます。

安定したホテル運営に欠かせない基盤づくり

ホテル開業にかかる費用を正しく把握できたとしても、実際の経営は「開業後」からが本番です。
人手不足、予約管理の煩雑さ、売上状況が見えにくいといった課題は、多くの新規ホテルが直面します。

特に開業初期は、限られた人数で日々の業務を回す必要があり、予約管理や客室状況の把握に時間を取られすぎると、本来注力すべき接客や改善に手が回らなくなります。

そのような状況を防ぐために、多くの宿泊施設ではPMS(ホテル管理システム)を導入しています。
PMSを活用することで、予約情報や客室状況、売上データを一元管理でき、日々の業務負担を大きく軽減できます。

初期費用や月額コストを抑えながら導入できるPMSを選べば、開業資金を圧迫することなく、安定した運営体制を整えることが可能です。 ホテル経営を長く続けていくためには、設備投資だけでなく、運営を支える仕組みづくりにも目を向けることが重要と言えるでしょう。

費用を正しく把握することが成功への第一歩

ホテル開業は、決して「勢い」だけで進められる事業ではありません。
必要な費用を具体的に理解し、どこにお金をかけ、どこを抑えるのかを判断することが重要です。

正確な情報をもとに計画を立てることで、開業後の経営リスクを大きく下げることができます。

これからホテル開業を目指す方は、費用の全体像を把握したうえで、一つずつ準備を進めていくことをおすすめします。